TL;DR
Superstate は本シリーズで最小級の発行体($5,290 万、シェア 1.9%、5 銘柄)であり、収益を調べられる唯一の存在でもあります。
公開数値は 日次費用 $95.9k、プロトコル収入 $6.5k/日、年換算で約 $240 万。
この分野では、規模と透明性は逆相関します。 一位の Ondo、二位の bStocks、三位の xStocks はいずれも事業別の費用データを公開せず、五位の Remora は発行主体すら不明で、六位の Superstate は収益を DefiLlama に載せています。
判断としては、Superstate が重要なのは規模ではなく、「このビジネスは儲かるのか」に答えられる唯一のサンプルだからです。発行側に限れば、答えはおそらく「否」です。
身分:二社目の米国トランスファーエージェント
Securitize と同種で、法的身分が能力を規定します。
- 米国トランスファーエージェント
- ラッパー:直接証券
- 議決権:完全
- 配当:現金で分配
- 銘柄:5 本
- 規模:$5,290 万(2026-09-04 基準、シェア 1.9%)
- チェーン:Solana、Ethereum ほか
- 流通:Jupiter
商品名は Opening Bell。SEC 登録企業の株式を直接オンチェーンへ載せることを目指しています。
Securitize と同様、パーミッションレスは「否」で DeFi は制限されます。 トランスファーエージェントであることの不可避な代償であり、Securitize の稿で詳述しました。適格な株主名簿を維持しながら、任意の匿名アドレスに資産を渡すことはできません。
したがって二社は競合ではなく、同一経路の二つのサンプルと見るべきです。実際の違いは、Securitize の本業はファンド(BUIDL 系)で株式は 3 銘柄のみ、Superstate の Opening Bell は株式そのものを狙っている点です。
唯一の費用データと、その基準の問題
本稿の核心であり、最も慎重さを要する部分です。
公開されている数字は二つ。
- 日次費用:$95.9k
- プロトコル収入:$6.5k/日 → 年換算で約 $240 万
まず、確信が持てない部分から。 DefiLlama の "fees" 項目はプロトコルによって意味が大きく異なります。利用者が支払った総額、原資産利回りのパススルー、取引手数料のいずれでもありえます。$5,290 万の規模に対し日次 $95.9k は年率約 66% に相当し、これは明らかに資産管理手数料ではありません。 よって $95.9k の基準は確認できず、いかなる計算にも使うべきではありません。
採用するのは「プロトコル収入 $6.5k/日」です。 この項目(protocol revenue)は DefiLlama 上で比較的一貫して定義され、プロトコル自身に帰属する部分を指します。
年換算で約 $240 万。
分野全体への外挿
粗いながら意味のある推計です。
トークン化株式市場の規模は約 $35 億(rwa.xyz、2026-10-16)。業界全体が 20 bps を全額徴収すると仮定すると:
$35 億 × 0.20% ≈ 年間 $700 万
分野全体の年間費用プールは約 $700 万です。
これが支えるべき対象と並べてみます。
- Ondo のトークン時価総額は約 $17.9 億
- Kraken は $150 億評価で調達し IPO を準備
- Robinhood の時価総額は $800 億
年間 $700 万の費用プールでは、このいずれの評価額も支えられません。
一方 Superstate 一社だけで年換算 $240 万のプロトコル収入があり、推計プールの三分の一に相当します。市場シェアは 1.9% にすぎないのに、です。
説明は二通り考えられます。
- 私の 20 bps という仮定が低すぎる(実際の料率がもっと高い)
- Superstate の収入に、株式トークンの管理手数料以外のもの(原証券の利回り分配など)が含まれている
私は二番目だと考えますが、確認はできません。 単一のデータ点で結論を出せない理由がまさにここにあります。できるのは、問いを鋭くすることだけです。
稼いでいるのは発行体ではない
ただし上の計算に依存せず、明確なことが一つあります。
xStocks の累計取引額は $250 億を突破しました(2026-02)。その手数料は Backed ではなく Kraken に入ります。同様に bStocks の 600 万件の送金は、最終的に BNB 圏の現物手数料として収益化されます。
発行体は発行手数料と管理手数料を稼ぎ、取引所は取引手数料を稼ぐ。そして取引のプールは一桁大きい。
これが 2026 年の最も明確な産業トレンドを説明します。Coinbase、Robinhood、Binance、Backpack はいずれも、他社商品の上場にとどまらず自社でトークンを発行し始めました。 狙いは発行手数料ではなく、利用者と資産を自社の取引所に留めることです。
したがってこの分野の終着点は、発行体ではなく流通者の勝利である可能性が高い。 基準がどうであれ、Superstate の $240 万は、発行だけでは企業を支えられないことを示しています。
小さく透明 対 大きく不透明
十社目まで書いて、一つの規則性が明確になりました。
| 発行体 | 規模 | 構造の開示 | 費用データ |
|---|---|---|---|
| Ondo | $984M | あり(二次市場条件) | なし |
| bStocks | $914M | 薄い | なし |
| xStocks | $847M | 完全 | なし |
| Robinhood | $151M | 薄い | 親会社のみ |
| Remora | $132M | ゼロ | なし |
| Superstate | $52.9M | あり | 完全 |
規模が大きいほど、自らを説明する必要がなくなります。 陰謀ではなくインセンティブ構造です。流通が強い発行体は経路で顧客を獲得でき、開示に限界的な見返りがありません。構造と規制遵守で機関の信頼を取りにいく Superstate は、帳簿を開くほかありません。
読者にとっての含意は、開示の充実を規模の小ささの埋め合わせと見ないこと、そして規模の大きさを構造の健全性の証拠と見ないことです。 この分野で両者はほぼ無相関です。
検証できなかったもの
- 日次費用 $95.9k の正確な基準 — 本稿ではいかなる計算にも使用せず
- 5 銘柄の具体名
- 償還条件 — 最低額、KYC、決済日数
- 参入要件 — 機関限定か適格投資家も可か(Securitize と同じ問い)
- 10 月基準の最新規模 — $5,290 万 は 9 月の数字
リスク
| 項目 | 程度 | 内容 |
|---|---|---|
| 規模が極小 | 高 | $5,290 万・5 銘柄では配分手段にならない |
| DeFi 利用不可 | 中 | トランスファーエージェントの不可避な代償 |
| 費用基準が不明 | 中 | $95.9k と $6.5k の関係が未説明 |
| 参入要件が不明 | 中 | 読者との関連性を左右する |
| データが古い | 中 | 規模は 2026-09-04 基準 |
注視する点
- プロトコル収入が規模に比例して伸びるか — 単位経済の成否を判断する唯一の方法
- 最初の TSV になるか — Securitize と同じ経路で、より小回りが利く
- Opening Bell が 5 銘柄からどこまで広がるか — 株式への本気度の試金石
- 二社目が費用を開示するか — 一社はサンプル、二社でトレンド
- 取引所発行トークンの市場シェア — 「流通者が勝つ」という見立ての直接的な検証
結論。 Superstate は今日使うべき商品ではありません。$5,290 万、5 銘柄、許可制、DeFi 不可。
しかし「発行体は儲かるのか」という問いを俎上に載せられる、本シリーズ唯一の発行体です。 粗い推計では分野全体の年間費用プールは約 $700 万で、どの参加者の評価額も支えられません。
本当のビジネスモデルはトークン化株式で手数料を稼ぐことではなく、それを使って利用者と資産を自社の取引所に留めることです。 そう捉えれば、2026 年の新規参入がすべて取引所であり新しい発行体でない理由は明白です。
規模とシェアは 2026-09-04 基準。費用データは DefiLlama の公開開示に基づき、日次 $95.9k の基準は確認できなかったため本稿のいかなる計算にも使用していません。市場規模 $35 億 は rwa.xyz の 2026-10-16 基準。20 bps は観測値ではなく私自身の仮定です。本稿は調査であり投資助言ではありません。