TL;DR
Papertrade は Hyperliquid HyperEVM 上の合成無期限先物取引所で、BTC/ETH の二市場のみ、最大 1000x のレバレッジを提供する。ユーザーの取引相手は $0 から始まる USDC プールで、損失を出したトレーダーには $PAPER が発行される。公開から 9 日で累積取引量は $1.35T、ユーザー数は 22,869。DefiLlama の累積収入は $60.79M で、うち $56.14M が $PAPER のステーカーに分配された。「収入/TVL」で見れば、現在のオンチェーンで最も収益性の高いプロトコルの一つだ。
ただし、このモデルの本質は「胴元との相対取引」である。
- 収入の 85% はユーザーの損失が積み上がったもので、LP Surplus の $51.5M に相当する。
- 現在の House 資金は $3.38M にすぎず、ユーザーの純ロング・エクスポージャーは約 $99M。
- BTC/ETH が同時に約 3–4% 上昇すると House の資金が尽きる可能性があり、利益を出したユーザーの出金は順番待ちになる。
- $PAPER は現在送金できず、市場価格もない。
- 収入は急減している。最初の 3 日は一日平均約 $9.3M だったが、現在の 24h は $2.37M にとどまる。
一般ユーザーには、裁定取引のできるエアドロップ農場というより、「損失還元型のカジノ」に近い。
仕組みとチーム
Papertrade の中心は「注文板がなく、ユーザーが自力で成長する LP と相対取引する」仕組みだ。ポジションの開始・終了時に、コントラクトがプリコンパイルを通して Hyperliquid の BBO の仲値を読み取り、価格として使う。ユーザーと LP の間で合成スワップを行い、Hyperliquid 上で実際に注文は出さない。そのため資金調達料、スリッページ、スプレッドはなく、銘柄ごとの OI 上限だけが制約になる。Papertrade Docs
- LP には直接入金できない。ユーザーの損失だけで増える。LP が支払えない場合、利益を出したユーザーに「キュー債務」を発行し、その後の損失を使って先着順に返済する。
- 料金体系は非対称。損失側には追加料金がない。利益確定時は利益に「asymmetric impact」の減額を適用し、値動きが小さいほど減額率が大きくなる。残った額にさらに 2% の手数料を課す。0.2bps 未満の利益では何も受け取れない。airdrops.io
- ステーカーには二つの収入がある。(1) 決済済み取引 PnL の 1%。(2) LP が上限の $5M を超えた場合、その超過分の全額。Papertrade Docs
チームの共同創業者は、著名な半匿名トレーダーの Jez(@izebel_eth) と Blurr(@blurr) である。Bankless
- コントラクトはアップグレード可能。izebel_eth、blurr、UngusTrade の 2-of-3 マルチシグが管理し、7 日のタイムロックがある。airdrops.io
- 2026 年 5 月、Guardian Audits に監査を依頼すると発表した。IQ.wiki ただし第三者のまとめでは、ドキュメントに公開監査報告書がないと指摘されている。ここは自分で確認する必要がある。
- VC はなく、資金調達の記録もない。
| 項目 | 状況 | 評価 |
|---|---|---|
| チーム | Jez、Blurr、半匿名トレーダー | コミュニティへの影響力は強いが、法人実体は不透明 |
| コントラクト権限 | 2-of-3 マルチシグ、7 日のタイムロック | 中央集権的なアップグレード権限がある |
| 監査 | Guardian Audits を発表、公開報告書は未確認 | 中程度のリスク |
| 資金調達 | VC なし、フェアローンチ | アンロックによる売り圧力はない |
取引とオンチェーンデータ
公開後の取引量は非常に大きいが、ポジションと TVL はローンチ時のピークから明確に低下した。以下は公式 Dashboard の 2026-10-19 06:15 UTC ごろのスナップショットだ。
| 指標 | 数値 | 解釈 |
|---|---|---|
| 累積取引量 | $1.35T | 10-17 は $1.24T、直近二日間は一日平均約 $55B |
| 累積清算量 | $40.7B | 取引量の 3.0% |
| 取引件数 | 1,460,633 | 一件の平均想定元本は約 $924K |
| ユーザー数 | 22,869 | 10-17 は 21,523、一日約 670 増加 |
| 未決済建玉 OI | $458.5M | ローンチ時は $11B、翌日は $693M、その後も縮小 |
| 未決済の証拠金 | $9.93M | 平均実効レバレッジは約 46x |
| TVL | $64.5M | ATH は 10-11 の $102.09M |
資料が示す TVL の観測点は以下だけで、期間中の日々の変化を復元することはできない。
| 観測点 | TVL |
|---|---|
| 2026-10-11 の過去最高 | $102.09M |
| 2026-10-19 06:15 UTC ごろのスナップショット | $64.5M |
ユーザー全体はロング寄りで、House のエクスポージャーは資金規模に比べて大きい。BTC のロングは $203M、ショートは $119M、純ロングは $84.2M。ETH の純ロングは $15.2M。合計約 $99M の純ロングを House がすべて引き受ける。House の資金は $3.38M にすぎない(LP 残高 $4.69M、未実現 PnL −$1.31M)。粗い推計では、BTC/ETH が同時に約 3.4% 上がると House の資金が尽き、キュー債務の状態へ入る。現在のキュー債務は $0。
また、LP 残高 $4.69M は分配上限の $5M より低いため、現在ステーカーが得るのは PnL の 1% 分配だけで、overflow は得られない。
収入の出所と分配(DefiLlama、2026-10-19 時点):
| 収入項目 | 金額 | 分配先 |
|---|---|---|
| LP Surplus(ユーザーの純損失) | $51.5M | 全額をステーカーへ |
| 利益側の取引手数料 | $7.95M | 50% を開発者アドレスへ、$3.98M に相当 |
| 清算手数料 | $1.33M | 50% を開発者アドレスへ、$665.8K に相当 |
| 合計 | $60.79M | ステーカー $56.14M、チーム約 $4.65M(7.6%) |
収入の減衰は明確だ。
- 最初の 3 日は合計約 $27.9M、一日平均約 $9.3M。
- 直近 7 日は合計 $30.56M、一日平均約 $4.4M。
- 直近 24h は $2.37M。
DefiLlama が累積データから外挿した「年率 $2.37B」は、持続可能な収入を大幅に過大評価している。DefiLlama
ウォレット単位では、Paperdash のランキングで上位トレーダーの取引量が $0.7B–$1.9B に集中し、たとえば 0x7827…4756 は $1.89B、0x0f72…a669 は $1.38B となる。一つのウォレットは総取引量の 0.2% 未満で、極端な集中はない。ただしこれは Paperdash のランキングに基づき、HyperEVM 全体の独立したオンチェーン集計は行っていない。Paperdash
PAPER の供給
$PAPER は HyperEVM 上の ERC-20 トークンで、完全なフェアローンチである。事前発行、チームや VC の割当、エアドロップ、アンロックはない。すべてのトークンは、ユーザーが損失を確定したときに発行される。Papertrade Docs
| 指標 | 数値(2026-10-19) |
|---|---|
| 総供給 | 8,677,225,186 |
| ステーク済み | 8,612,435,206(99.25%) |
| 累積ステーキング報酬 | $54.06M USDC |
| 一枚あたりの累積分配 | 約 $0.0062 |
発行曲線は、LP が $2M 未満なら損失 $1 ごとに 100 PAPER を発行する。それを超えると 100 × (120M / (120M + H))² に従って減衰する。H はプールの過去最高収益で、増えるだけで減らない。10-17 時点の H は約 $222.7M で、損失 $1 あたり約 12.3 枚を発行する。一枚あたりの PAPER の取得コストは、ローンチ時の約 1 セントから約 8 セントへ上昇した計算になる。airdrops.io
注意すべきなのは、
- ローンチ時に 1 セントで取得した初期分と、現在約 8 セントで得る分が同じ報酬プールを分け合うため、後発参加者のリターンが大きく希薄化する。
- 現在の一枚あたり累積分配は約 0.6 セントで、現在の取得コストより低い。
- LP が $2M を割ると発行速度は $1 あたり 100 枚に戻り、新たな希薄化を引き起こす。
⚠️ 模倣トークンへの注意:現在 $PAPER は送金できず、公式 DEX ペアもない。Solana には PAPER というトークンがあるが、24h の取引量は $0。Coinbase にも Solana と記載された "papertradexyz" のページがある。これらは公式トークンではなく、購入してはいけない。
リスク事象と主なリスク
オラクル操作は実際に発生している。公開当日(10-10)、ウォレット 0x2025...840e は Hyperliquid で ETH を大量売買し、BBO 価格を約 0.12% 動かした。Papertrade では 1000x のレバレッジで約 $1.28M の利益を得て、取引量は $3.18B だった。Hyperliquid 側のコストは約 $52K の手数料だけだった。その後チームは、オンチェーンとリレーレイヤーの OI 上限を厳しくした。The Block via TradingView DefiLlama はこれを Oracle Manipulation のセキュリティ事象として記録している。
| リスク | 深刻度 | 説明 |
|---|---|---|
| 支払いの順番待ち | 高 | House の $3.38M に対して純エクスポージャーは約 $99M。一方向の相場でキュー債務が発生し、支払い時期は固定されない |
| オラクル操作 | 高 | BBO の仲値は大きな資金で動かせ、公式リスクページも認めている |
| PAPER に流動性がない | 高 | 送金不可、価格なし、送金解禁の時期は未定 |
| ヘッジによる発行と希薄化 | 中 | Delphi の tempest は、ロングとショートのヘッジで低コストに PAPER を発行できると指摘する Bankless |
| 収入減少 | 中 | 日収は約 $9.3M から $2.37M へ低下 |
| 中央集権性とインフラ | 中 | マルチシグでコントラクトを更新でき、HyperEVM のブロックスペースに依存する。Dashboard は一ブロックの予算 3M gas、待機中 9.62M と表示 |
| 極端なレバレッジ | 高 | 1000x では逆方向の約 0.052% の変動で全額清算される |
結論
Papertrade の設計は確かに新しい。「胴元の利益」を 100% トークン保有者に渡し、チームは取引・清算手数料の 50% だけを受け取る。これは総収入の約 7.6% だ。公開から 9 日で $60M の収入と $1.35T の取引量を生んだ。ただし収入はほぼすべて個人トレーダーの損失に由来し、持続可能な手数料率の堀はない。House の資金とユーザーのエクスポージャーは著しく不均衡で、オラクル操作も起きている。収入は急速に低下し、継続利用は新しい損失資金の流入に依存する。
観察点:今後は四つの指標を見る。
- House の資金が $5M 以上で安定するか。これがステーカーの overflow 分配再開を決める。
- キュー債務が発生するか。
- PAPER の送金がいつ解禁され、最初の市場価格が約 8 セントの取得コストを上回るか。
- 日収が $2M 以上で安定するか。
もともと BTC/ETH を高レバレッジで取引しているなら、PAPER は損失還元と考え、ステーキングを忘れないようにする。一方、PAPER の獲得だけを目的に参加するのは、実際の損失を、市場がなく、分配が次の参加者の損失に依存するトークンへ交換する行為であり、推奨しない。
データのスナップショット:Papertrade Dashboard と DefiLlama、2026-10-19 06:15 UTC ごろ。本稿は投資助言ではない。
資料について:本稿はユーザーの研究資料に基づき、2026-10-19 06:15 UTC ごろの Dashboard と DefiLlama のスナップショット、および元の出典の基準を保っている。今回は Surf の呼び出しや独立したオンライン確認を行っていない。House の 3.4% のストレス推計、トークン取得コスト、収入の年率換算はいずれも資料中の条件付き推計であり、支払いの保証、市場価格、将来の収入予測ではない。元の TVL グラフの仮置きは、資料で裏付けられる二つの観測点に置き換え、過去の時系列は作っていない。